ARP

Hisashi Saitoh

SOUNDS: Hisashi Saitoh

2015.07.03

齋藤久師:1991年、ビクターエンターテインメントより「GULT DEP」でメジャーデビュー後、様々な電子音楽に携わり幅広く活動。その経験から、多くのメーカーのシンセサイザー開発にも深く関わる。著書に「プログラマーが教えるDTMテクニック99」他。

Sine Bottom Bass

ARP ODYSSEYに用意されている基本波形はノコギリ波と矩形波、そしてホワイト/ピンクの切り替えで選べる二種類のノイズです。しかしながら、昨今の電子音楽において、超重低音を担う正弦波は必要不可欠になってきます。しかし、ご安心ください。ARP ODYSSEYは容易に正弦波を作り出す事ができるのです。 まず正弦波を作り出すためにはオシレーター・セクションの波形を全てキャンセルし、VCFセクションの「VCF RESONANCE」を上げ目にし、「VCF FREQ」を下げる事で生じる発振を利用します。次にフィルター・セクションの「KYBD CV」スイッチをアクティブにし、値を最大にすればノート通りの音階が付く仕組みです。デモ・サウンドでは、「エンベロープのリリースを少し上げた余韻のあるボトムベース」そして「エンベロープ・リリースを短めにしたタイトなボトムベース」、最後に「フィルターにADSRを送り、余韻の部分で音程が降下するボトムベース」の3種類を用意しました。応用として、発振の度合いやエンベロープ・タイムを変える事で、シンセドラムのような音色バリエーションも容易に作り出すことが出来ます。

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80's Seq Bass

80年代、デジタル・シーケンサーの登場と共に、タイトで正確なシーケンサーによるシンセベースが大流行しました。中でもARP ODYSSEYは、その立ち上がりの良さで多くの楽曲でシーケンシングベースとして活用されました。デモ・サウンドでは、ノコギリ波を二つ使い、ドライブ感と分厚さを付けるためにシンクを外し、片方のピッチをLFOで揺らし、動くディチューン効果をつけてみました。また、キレの良いエンベロープ・ジェネレーターのディケイを絞る事で更なるアタック感を出しています。この時、エンベロープ・リリースを若干上げる事で、ベースとしての存在感が増し、曲全体のグルーブにも作用してくるのです。また、ARP ODYSSEYは「ADSR」と「AR」の2基のエンベロープを搭載しているので、VCFとVCAそれぞれに個別のエンベロープ設定をしても面白い効果が出るでしょう。

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S&H SE

ARP ODYSSEYは、そのコンパクトなボディーからは考えられないようなモジュラー・シンセサイザー並みの複雑なパッチングを可能としており、様々なSE音を作り出す事が出来ます。中でも、サンプル&ホールド機能は当時の競合他社の製品と比べても群を抜いていました。デモ・サウンドでは「LFO REPEAT」と「AUTO REPEAT」ボタンをアクティブに、鍵盤を押さずに発音させています。(もちろん、鍵盤を押さえて発音させる事もできます)まず最初に、2基のオシレーター共に「S&H」スイッチをアクティブにし、値を最大にします。次に「S&H MIXER」セクションの「NOISE GEN」をアクティブにしする事で、シンプルなS&Hが得られます。「LFO FREQ」で発音のスピードをコントロールしながら、フィルターで発振をさせます。最後にフィルター・セクションの「S&H」をアクティブにし、値を上げる事によって、一音一音にフィルター・エンベロープがかかり、リズミックでユニークなS&Hサウンドが得られます。

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Ring Mod SE

ARP ODYSSEYにはリング・モジュレーターが標準で搭載されており、S&H同様に強力なSEシンセサイザーとして側面を持ち合わせています。文字通り、金属的な音色を作り出すリング・モジュレーターは、2基のオシレーターの掛け合わせによって発生させます。[AUDIO MIXER]セクションに用意された[RING MOD]スイッチをアクティブにし、値を上げ、2基のオシレーターのピッチをずらす事により、複雑な金属音を容易に発生させる事ができます(この時、オシレーター自体の音量は全て下げてみましょう)。デモ・サウンドでは、まず手動でオシレーター2の「COARSE」を変調させてみました。次に、その状態から「PORTAMENT」をかけ、ユニークな金属音のグライド効果をつけてみました。最後に、「HPF CUTOFF FREQ」にて低音成分をざっくりとカットし、エンベロープ・リリースを少し上げ、当時コニープランク一派が好んで使用した金属的なパーカシッブ・サウンドを作り出してみました。

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