ARP

SOUND: Ryota Hayashida(Part 2)

2015.08.21

林田涼太:株式会社いろはサウンドプロダクションズ代表。Iroha Studioをベースにレコーディング・エンジニアとして活動する中、日本語で書かれたヴィンテージ・シンセサイザーの情報サイトとしては最古(1994年)のproun.netを主宰。日本のエレクトロニック・フュージョン・バンド、9dw(Nine Days Wonder)のサポート・メンバーとしても活動し、アメリカのSXSWにも出演した。小学六年生の頃からクラフトワークなどのドイツの電子音楽を聴き、MIDIのない時代からシンセサイザーを操作していた古参ユーザー。

John Foxx風ツヤのあるシンセリード

ジョン・フォックスといえば初期Ultravoxのリーダーとして、脱退後はソロ活動で超絶なArp Odysseyのサウンド・メイキングを披露してくれたイギリスのシンセ貴公子です(初期から彼と仲の良かったロビン・サイモンとは去年一緒に新宿で飯を食いました)。ジョンのダークなシンセの世界観は今聞いても新鮮ですね。このリードはARP Odysseyの特徴的なツヤのあるリード音を表していて、僕が勝手に「全出し系」と読んでいる、多くのパラメーターを上げきったセッティングで作っています。オシレーターシンクの入った状態でRING MODの倍音やS&Hのミキサーから出る音で変調をかけてサチュレーションのようなツヤを出します。これは作り方としてビリー・カリーのソロの音と実は同じ系統なのですが、プレイの途中にTRANSPOSE 2 OCTAVES DOWNにスイッチを入れてVCO2のCOARSEをぐいっと上げてみるのがキモです。まるでARP Odysseyが叫んでいるかのようです。

John-Foxx

DAF風ぶっといシンセベース

ジャーマン・エレクトロの祖といってもいいDAFはとてもシンプルでかつ力強い名曲を数多く発表してきましたが、全作品に共通するのはぶっといシンセベースです。ただ、彼らが多用していたのはARP Odysseyではなかった上に、プロデューサーのコニー・プランクの発案でシンセをベースアンプから出していたため、なかなかあの質感は出せません。しかしあえてそれを目指しました。2VCOはほんの少しだけデチューンをかけて、RING MODの回路から流れてくる倍音を加味しているのがミソ。またハイパスフィルターも入れています。太い音を求めるシンセベースでハイパスフィルターを入れるなんて...と皆さん思ってらっしゃるかもしれませんが、狙うべき音に対しては積極的に使ってみるべきです。そういえば初期のデペッシュ・モードもこういうシンセベースが好きでしたね。

DAF

YMOのHurrahでのライブで使われたファンキーなシンセベース

たとえYMOがそんなに好きではないという人でも、あのHurrahで行われた伝説のライブ映像は「かっこいい!」と言います。僕も大人になってからあの良さがわかりました。そんな脂ののったステージでのシンセベースは細野さんによるARP Odysseyの手弾きでした。今聴くと音色は思った以上にファンキーで、とてもグルーヴィーですが、このセッティングは本物とほぼ同じ音をしていると思います。

YMO

音色作りの可能性を見いだす実験的な音色

○○風、みたいなのばっかり作ってしまったので、ちょっとアヴァンギャルドだけど面白い音を作ってみました。S&Hを使って弾くたびに違うピッチで音が出る設定にし、鍵盤を弾きながらADSRのアタックをぐりぐりやってみるとこんな音が。ADSRのディケイとLFO FREQの値も音色に大きく影響しますので、自分なりの良いポイントを探してみてください。面白いモジュラー並みのルーティングが可能なARP ODYSSEYの可能性を示したデモンストレーションです。

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