ARP

Ryota Hayashida

SOUNDS: Ryota Hayashida

2015.06.26

林田涼太:株式会社いろはサウンドプロダクションズ代表。Iroha Studioをベースにレコーディング・エンジニアとして活動する中、日本語で書かれたヴィンテージ・シンセサイザーの情報サイトとしては最古(1994年)のproun.netを主宰。日本のエレクトロニック・フュージョン・バンド、9dw(Nine Days Wonder)のサポート・メンバーとしても活動し、アメリカのSXSWにも出演した。小学六年生の頃からクラフトワークなどのドイツの電子音楽を聴き、MIDIのない時代からシンセサイザーを操作していた古参ユーザー。

Daft Punk “Robot Rock” 風オシレーターシンク・リフ

Daft Punk の“Robot Rock”のMVはまさにのちの彼らがアルバム”Random Access Memories”でプロデュースをオファーするジョルジオ・モロダーの70年代の世界観を具現化していますね。ロボットがギャラクティックなスペースサウンドの中でディスコを踊る…しかもそこにロックなイメージを加えているわけですが、ジョルジオや彼の参加していたイタロディスコユニット、ミューニック・マシーン等のアートワークを手がけていた長岡秀星のイラストレーションの世界がそのままMVになったような印象でした。その“Robot Rock”の中で何度も繰り返されるシンセリフはまさにARP Odysseyそのものですね。一発でわかる他のシンセではなかなか出せない力強いオシレーター・シンク感を思う存分発揮したサウンドを再現しました。サウンドのかなめはハードシンクさせたオシレーター2のピッチをエンベロープでいかにスイープさせるか、という部分にあります。ちょっとしたパラメーターの調整で大きくニュアンスが変わります。

Kraftwerkがよくやるピッチ感のないエフェクティブなシンセ音

Kraftwerkといえば60年代から今も活動を続けるドイツのテクノポップの元祖ですが、彼らも早い時期からARP Odysseyを自分たちのサウンドに取り入れていました。彼らの素晴らしいところはとにかくシンセの使い方のうまさ、かっこよさにあるといえます。お手本のないところから彼ら自身が独自に生み出していったスタイルはとても参考になることが多いです。今回再現したサウンド・プログラムは特にこれといった曲というわけではありませんが、よくKraftwerkがライブやレコーディングでも80年代から多用してきた典型的なサウンドです。鍵盤を押すたびにランダムな音色が生み出され、若干の不穏でダークなイメージを付加してくれるコンピューター・ワールドのカオティック感を決定づける重要なサウンド・イメージですね。ちょっとパラメーターをいじるだけで簡単にイメージが変わっていくのでここからオリジナルなサウンドを作ってみてください。

Gary Numan風重厚シンセベース

ゲイリー・ニューマンといえば80年代に一斉を風靡したシンセポップ/ニューウェーブの申し子のような人で、いつも綺麗に整えられたサラサラヘアに白塗りといったルックスでちょっとデヴィッド・ボウイのようなグラムロックな雰囲気を漂わせながら中性的なイメージでアナログ・シンセを弾きまくっていました。ビブラートのきいたパッドや軽いけど印象的なリズムは独特のものがあり、彼は今もそのスタイルを大きく変えず現役で活動しています。 彼のサウンドを大きく印象付けていたのはなんといってもARP Odysseyのシンセベースでしょう。時には2台用意してステレオのように分厚いシンセベースをかき鳴らしていました。それはいつもARP Odysseyだったのです。シャープで重厚なサウンド・イメージは彼にぴったりだったのでしょう。そんな彼のお得意のベースサウンドを彷彿とさせるサウンド・プログラムを作ってみました。

Billy Currie(Ulrtavox)のシンセソロパート

80年代のイギリスにおいてゲイリー・ニューマンなどと同じく大メジャー・アーティストだったUltravoxは、”Do They Know It’s Christmas?”の作曲者として知られているミッジ・ユーロをボーカリストに迎えたあたりから一般に人気を博しました。このバンドの面白いところは、ミッジがギターを弾くのにソロパートは必ずシンセ、しかもARP Odysseyと決まっていたことです。キーボーディストのビリー・カリーはクラシックの教育を受けた人で時々バイオリンも披露してくれる才能ある人でしたが、ARP Odysseyで奏でるソロパートの音色は独特のものがありました。ライブでは時々ソロの途中でVCA GAINを上げて音をホールド状態にし、ステージの前に出て行って観客を煽る…というようなパフォーマンスも見られ、みんな感動していたものです。その時のサウンドをイメージしてみました。かなり閉じたフィルターとビブラートに使っているスライダーを演奏に合わせて手で大胆に調整することがポイントですが、少々のフェイザーとディレイを加えていただいた方がよりリアルなサウンドになると思いますので是非試してください。